5.嘘発見器

世間一般的に『嘘発見器』とは、人が嘘をついているかどうかを判断する装置である。
しかし、彼に掛かればそんなものは必要ないのかもしれない。

「アイリぃー!」

ぱたぱたと廊下に一際大きな靴音と声が響く。
小動物のような小さな体が私の背中に抱きついた。

「キア先輩?」
「そう! ボクなの!」

えっへん! と腰に手を当てて見せるが、肝心の手は制服の袖に隠れていて意味を成さない。
私が先輩、と呼んだ彼はこの学校の3年生で最近転校してきたばかりのキア・ヴェルアス先輩だ。
元々、イギリスのロンドンに住んでいたらしいのだけれど、ご両親の都合でこんな日本の田舎町に越してきたらしい。
こんなド田舎に来てくれるなんて、恐縮過ぎます。センパイ。
しかも、日本語が凄く上手。(たまにカタコトだけど)
見た目からして、可愛らしい顔立ちで背も低いから転校初日から凄く目立っていた。
更に驚きな事は、私のクラスメイトの市瀬久狼君と知り合いだって事。
どういう知り合いなのかは解らないけど、物凄い事だというのはよく解る。

「私に何か用ですか?」
「んー、姿が見えたから追いかけて来たの! ダメだった?」

こて、と首を横に傾げる先輩。
ちょっと待って私キュン死ぬ!!
死語だろうがなんだろうが、キュン死ぬ!!!!

「ネェ、アイリ。朝ごはんは食べなきゃダメだよ?」
「え? 先輩どうして解ったんですか?」
「ボクはアイリの事ならなーんでもお見通りなんだよ!」
「あははっそれは言い過ぎですよー」

ふて腐れたのかムスッと頬を膨らませて先輩が口を開いた。

「じゃあ、アイリの使ってるジャンプーはH&Sでしょ! あと、昨日は夜プリン食べたでしょ!!」
「ちょっ先輩!! なんでそんな事まで知ってるんですかっっ!!」
「ボクに嘘は通用しないのデスッ!」

それからも、私はキア先輩に色々と言い当てられて観念した。
先輩はどこで私の情報を得ているんだろう。
その情報収集能力を少しでもいいので私に別けてください。

「ボクはね、鼻が利くんだよ!」
「……?」
「だから、アイリの事解るの!」
「え、私は先輩がよくワカリマセン……」
「……いいんだよ、アイリはボクの事なんて解らなくて」

呟いた先輩の表情はいつものにこにこ顔ではなくて、冷たさを帯びた表情をしていた。
私という存在そのものを拒絶するような、そんな表情……。

「せん、ぱい……??」
「ん、ほら、アイリにはくろーが居るしネ!」
「なっ何言ってるんですか!!」

真っ赤になる私を見て、先輩はケタケタと笑い出す。
良かった、いつもの先輩だ……。

「アイリはまだまだボクの嘘を見抜けないねっ」
「え?」
「ボクの事、アイリに解って欲しいに決まってるでしょっ!」

そう言うや否や、先輩はもと来た道を引き返していった。
一番、解らないのは、先輩の心なのかもしれない。
こんな時、あの装置があれば先輩の心が解るかもしれないのに、とそんな事を考えた……。



お題5「嘘発見器」
読んで下さり有難う御座いました。
キアがまだまだ安定してない・・・:(;゙゚'ω゚'):
最終的に、キアが嘘発見器にもなるよ! みたいなお話しにしたかったんです←
鼻利くから何でも解るよー! みたいなww
キアの場合愛莉はタジタジ。


完成:2011.2.02